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君と見る虹その1

今日も……今日も駄目だった……!!
「しゅんすけ君!」
失意に打ちひしがれている僕に、先輩が近づいてくる。
「その様子じゃ、駄目だったみたいね」
「ええ……」
「大丈夫、明日があるわよ」
なぜだか今日は、先輩の励ましも、空虚なものにしか聞こえない。
先輩はいつも僕を励ましてくれるのに。
「先輩……もしかして、僕はサッカーに向いてないんでしょうか?」
そして僕は、決定的な言葉を発してしまったんだ。


僕がサッカーを始めたのは、ほんのちょっと前のことだ。
いや、まだ始まってもいないんだと思う。
どういう訳か、僕が蹴ったボールは必ず使い物にならなくなるから。
だから、僕は、いまだにサッカーをしたことがない。
きっかけは単純だ。
さっきから僕を気遣ってくれる「先輩」。
僕にとっては姉同然の人。
この人の為に、僕はサッカーをやろうと思った。
先輩の心を、取り戻すために。

先輩は、突然サッカー部のマネージャーになった。
それは恐らく、一人の男が関係している。
先輩の恋する相手――野口和志。
サッカー部のエースにして、生徒会メンバーでもある。
万能、といってもいいのだろう。
人気もそれなりにあるらしい。
会長の人気がすごいから隠れ気味だけど。

そんなわけで、その野口の手から先輩を救い出すために、
僕はサッカーが上手くならなければいけないんだ。
上手くなれば、先輩はきっと僕を見てくれるはずだから。
でも、僕は、サッカーに向いていない、みたい、だ。


「たまたま運が悪かったかもしれないし」
「もう何回運が悪かったか忘れちゃうくらい運が悪いんですね」
「そんな……頑張ればきっと大丈夫だよ!」
先輩の、言葉が痛い。
僕は(ある意味)先輩を助けようとしているのに、先輩に心配ばかりかけている。
なんて情けないんだろう。
「じゃあ。もう一回だけ」
そう言って、サッカーボールを手に取る。
これを蹴って、何も変なことが起こらなければ……!!
しかし、僕の淡い期待は、やはり、裏切られたのだった。

―つづく―

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