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君と見る虹その4

翌日からも僕は蹴って蹴って蹴りまくった。
サッカーボールも、バスケットボールも、バレーもテニスも。
あらゆる種類のボールを蹴った。
流石に砲丸投げの球を想いっきり蹴りはしなかったけど、一応蹴った。
蹴りが外れて大こけしたこともあった(みっちゃんが大笑いしたのは言うまでもない)。
能力が発動するのは蹴るだけじゃないかもしれないから、殴ったりもした。
実験を始めて二週間。一つの結論が出た。
「サッカーボールを蹴ったときにだけ」僕の『能力』は発動する。
そういうことだった。
他のボールを蹴っても空気は抜けない。
サッカーボールを殴っても空気は抜けない。
空気が抜けるのは、サッカーボールを蹴ったときだけだ。

「もう結論から言うとそれしかないんだけど」
「そうだね……」
実験が終わると毎日、ホープ軒でラーメンを食べた。
結果をまとめ、次の日の作戦を練る意味もあったけど、
単純に運動しておなかが空いたというのもある。
「はい、ラーメン2つ」
もう手馴れたもので、看板娘さんはメニューを聞かなくてもラーメンを持ってきてくれる。
ちなみに、初日以外はちゃんと自分の分の料金は自分で払っている。
「あれ?」
でも、いつものラーメンとちょっと違う。
チャーシューが多い。それに、キムチは頼んでないんだけど。
「ソワカちゃん、これは?」
僕は看板娘さんに聞いてみた。
毎日通っていると流石にお互いの名前くらいは覚えている。
「私からのサービス」
「……なんで?」
「私、今日でここ最後だから」
えっ!?
思わずみっちゃんを見た。知らないと顔が言っている。
「どうして辞めるの?」
聞いてからしまった、と思った。言いにくい理由だとどうするんだ、僕は。
「真実を探さないといけないから」
からかっている訳でもないし、変になってしまった訳でもない。
何かもっと神秘的な何かが、確かに看板娘さんからあふれていた。
「だからね、ここは終わりにしなくちゃいけないの」
少し寂しそうな顔をしていつけど、決意はとても固そうだ。
僕は、どう言ったらいいのかわからなかった。
みっちゃんは、こっそりラーメンを食べていた。

……とりあえずラーメンを食べ終わって。
「最初から話をしましょ。まず結論」
「僕の『能力』はサッカーボールを蹴ると空気を抜いてしまうこと」
「そうね。ボール自体にはダメージはなかったから、空気だけ抜いてることになるはず」
「他のボールでは何もなかったし」
うんうん。二人で頷く。
「でも、本当にそれだけなのかなあ」
なんだか釈然としないなあ。これだけってのは。
「あ、そうだ。まだ調べてないことがあるじゃない」
「あったっけ?」
「うん。どれくらいの力で蹴ったら空気が抜けるか調べてないけど」
あー、確かに。蹴るってのもまた微妙な表現だもんね。
「じゃあ、明日は最後の実験だね。頑張ろう!!」
「う、うん」
そうか、明日で最後なんだ。
なんだか、胸の奥が変な音を立てた。気がする。
「じゃあ、明日に備えてお互いに準備しましょ」
ということで、なんだかモヤモヤを残したまま解散になった。
勿論、看板娘さんにはちゃんとお別れを言ったけど。

―つづく―

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