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君と見る虹その7

「おはよーっす」
今日も元気に登校だ。
「おはよう。しゅんすけ君」
「あ、先輩。おはようございます」
「しゅんすけ君、やっぱり雰囲気変わったね」
「? そうですか?」
昨日もそんなこと言われたな。
「うんうん、断然カッコよくなった感じ」
「そう言われてもよく分からないんですけど」
「自分ではわからなくても、周りの人にわかるってこともあるのよ」
ふーん、そういうものなのかな?
「まあ、何があったかはなんとなく分かるんだけどね、ふふっ」
先輩はその理由まで察しがついているようだ。
「仲良きことは素晴らしきことかな、よ」
頭にハテナの浮かんでる僕を尻目に、先輩は楽しそうに笑った。
その笑顔を見て、僕も、なんとなく、本当になんとなく。
昨日から続く、このモヤモヤの正体が分かったような気がした。

あっという間に昼休み。
どうでもいい話なんだけど、漫画とかの主人公って勉強しないキャラが多いよね。
ずっと寝てたら昼休み、とかさ。あれってずるいよ。
なんで彼らは寝て成績悪くてもすっごい能力を持ってたり、モテモテだったりする訳?
僕なんて、授業はちゃんと聞いて成績もそこそこなのに、あんな『能力』なんだもの。
そりゃあ、勉強しないことも有りだけど、そんなところに神は宿らないと思う。
でも、ちょっとは妬みたくもなる。
「そういえば、最近先輩と弁当食べてないな」
僕がサッカーを始めると言った日から、僕は昼休みと放課後にサッカーの特訓を始めた。
それが一ヶ月ほど前のこと。
それ以前は、時々だけど、先輩と一緒に弁当を食べたりしていた。
「あ、しゅんすけ君」
「先輩、どうも」
先輩のことを考えていたら、本当に出会っちゃった。
「今日も特訓? それとも修行?」
以前の茶化しをはっきり覚えているあたり、先輩らしい。
「いやあ、まあ、特訓はもう止めちゃったというか諦めたというか……」
そもそもサッカーの特訓なんて、みっちゃんと出会ったあの日からとっくに止めている。
「そう、なんだ」
先輩はちょっとだけ悲しそうな顔をしたけど、すぐに笑顔になり、
「何があってもしゅんすけ君はしゅんすけ君だもんね」
にこにことそんなことを言ってくれた。
「じゃあ、お弁当一緒に食べよ」
続けてお誘い。勿論、いいですとも。

「特訓は止めちゃったの?」
いきなり痛いお言葉ですね。
「サッカーは諦めました」
僕はキッパリと言う。
「へえ、未練ないんだ」
「そうですね……原因がはっきりしたんで、未練はないです」
「ふうん……じゃあ、もう放課後大丈夫なんだ?」
「え、まあ、大丈夫だと思いますよ」
なんだ、この展開は。
「じゃあ、また一緒に帰れるね」
先輩が嬉しそうに笑う。
先輩って、こんなによく笑う人だったっけ?
「そうですね」
と答えて、違うと思った。
「あ、でも、用事ができるかもしれないし……」
語尾を濁す。ちらりと横切ったのは、みっちゃんの顔。
なぜか、寂しそうだった。
……って、違うだろ。
いくらボンクラでも、ここまでくれば流石に分かる。
僕は――

―つづく―

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