sister's power > ソワカちゃん > きみにじ8
君と見る虹その8

昼の授業はさっぱり頭に入らなかった。
今、すべての事柄が、僕の中で整合性を持ってくみ上げられていく。
一昨日の胸の痛み。みっちゃんのリアクション。悲しそうな顔。
なんだ、分かってしまえば簡単だったんだ。
それと同時に、僕にはやらなければならないことができた。
みっちゃんに、ちゃんと伝えないと。
そして、謝らないと。

やっとチャイムが鳴った。終わりだ!
と、しかし、こんな時に限って邪魔が入る。
「しゅんすけ! お前掃除当番だぜ!」
「えっと……今回パスって訳には」
「お前、前もパスったじゃねーか。駄目」
とほほ。
バッチリ掃除を済ませて、学園を出た。
これでだいたい30分くらいロスかな。
急げ! きっとみっちゃんは待っている!
「って、なんでさ!!」
世の中理不尽だ。
どうして先輩が待ってるんだよ!!

「しゅんすけ君、帰らない?」
「あー、えっと……」
「それとも、用事?」
「え、う……はい。そうです」
途切れ途切れに答える。口が渇く。
でも、ここはちゃんと言わないと。
待ってるんだ。彼女はきっと待っている。
「なーんだ」
真剣にグダグダな僕に、先輩はお茶目に言った。
「しゅんすけ君、男の目になったね」
はい?
「会いに行くの、女の子でしょ?」
えーっと……ここは正直に
「はい、そうですけど」
「やっぱり。あーあ、私はもうお払い箱かあ」
「へ? どうしてそうなるんですか」
意味が分からない。展開に頭が付いていかない。
「私の弟であることは、卒業ってことよ」
「……あ!」
「じゃあね。お幸せに」
そうして先輩は去っていく。
僕はもう一つの真実を今知った。
僕はずっと、先輩に恋していたんだ。
「さよなら、達子先輩。僕の初恋の人」
ありきたりだったけど、先輩の背中に僕は小さく声をかけた。

そして走る。
親友を人質に取られた男のように、ひたすら走る。
いつもの時間より、1時間は遅くなっていると思う。
みっちゃんは待っていてくれるだろうか?
いや、そんなことを考えても仕方がない。
僕は、彼女に言わなければならないことがあるんだ。
その角を曲がれば、川辺に出る。あとは一直線。
そして、ようやく、その場所に、僕は辿り着いた。
小さな後姿がある。座っているようだ。
「みっちゃん」
僕は、なるべく優しく声をかけた。

―つづく―

その9へ

その7へ

タイトルへ
inserted by FC2 system